デンマーク人権研究所の新報告書、様々なセクターの企業による下流の人権デューディリジェンスについて解説
[Due diligence in the downstream value chain: case studies of current company practice], 2023年2月20日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
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多くの企業は、川下におけるデューディリジェンスをすでに何らかの形で実施している。バリューチェーンのこの部分において影響を受けるリスクが高い特定のセクター、例えばハイテク企業などは、川下におけるデューディリジェンスに関する慣行をより確立している一方で、様々なセクターの企業が、川下の人権への影響に対するデューディリジェンスを含む、バリューチェーン全体に対するアプローチを取っている。本報告書のケーススタディが示すように、これは様々な方法で実施することができる。例えば、バリューチェーン全体における人権影響評価(HRIA)の実施、企業が下流 の人権影響を認識し行動できるようにする、顧客確認(KYC)チェックや贈収賄・汚職防止プロセス など、既存のよく知られたプロセスを人権影響を考慮するために適応させる、製品のマーケティングに責任 あるアプローチを開発する、などである。
これらのケーススタディは、企業インタビューに基づき、企業のプロセスや 方針から得られた情報をもとに作成された。また、2022年10月にデンマーク人権研究所が開催した企業向け非公開ラウンドテーブルでは、チャタムハウス規則の下で下流の人権影響に取り組むための共通の課題と実践的アプローチについて議論が交わされた。 [...]
4 川下における人権の影響に対処するために必要なことは?
上述の通り、企業は川下における人権への負の影響により積極的に取り組むべきという新たな衝動に駆られている。しかし、企業がこれらの影響によりよく対処することを求める声は、UNGPsとOECD多国籍企業行動指針という強力な基盤の上に立つ明確なガイダンスがないために妨げられている。2022年10月にDIHRが開催した非公開の円卓会議では、多くの企業代表者が、バリューチェーンのこのセグメントにおけるデューディリジェンスをさらに発展させるための運用ガイダンスやツールがないことに不満を示した。 [...]
以下に紹介する多くのケーススタディにあるように、バリューチェーンのアプローチは、企業が期待されることを理解し、川下における行動を促進するために社内の賛同を得るのに役立っている。場合によっては、今後予定されている規制のアプローチによって、これが推進されたこともある。明確な要件を設定し、バリューチェーンの川下部分において人権デューディリジェンスを既に実施している企業の現在の実践を満たす一貫した規制環境を確保するためには、規制イニシアチブ全体で一貫したアプローチが必要である。注目すべきは、著名な企業を代表する多くの声明が、この分野の規制が完全なバリューチェーン・アプローチをとることへの支持を表明していることである。
5 企業の実践
多くの企業はすでに、バリューチェーンの川下部分における人権への影響をカバーする何らかのデューデリジェンスを行っている。中には、明示的にそうしている企業もあり、方針を採用し、人権デューディリジェンスに対して完全なバリューチェーン・アプローチを取っている企業もある。また、そのような枠組みはないものの、人権の影響を考慮した既存のプロセスを通じてそれを行っているところもある。
川下の人権への影響を管理するために使用できる戦略やプロセスには、以下のようなものがある:
- バリューチェーン全体で人権に取り組むための政策的コミットメントを行う
- バリューチェーン全体における人権への影響評価を含むリスクのマッピングと、その結果を利用した行動計画への反映
- 研究開発段階での介入により、製品が責任を持って設計されていることを確認する
- 販売プロセスやKYCチェック、贈収賄・汚職防止プロセスに人権に関するデューディリジェンスを組み込む
- 人権の影響を管理するための責任あるマーケティング手法の開発
- 人権リスクに対処し、緩和策の効果を監視し、改善を促すための企業顧客との継続的なエンゲージメントを行う
- 例えば、設計上の特徴、継続的なサービス契約、集団行動への取り組みなどを通じて、レバレッジを高める方法を模索する
- 使用済み製品の廃棄が人権を尊重した方法で行われるようにする
- ライツホルダー及び影響を受けるコミュニティとのエンゲージメントの実施
- 継続的なリスク管理プロセスにより、従業員および外部の利害関係者によるリスクのエスカレーションが可能であること
- 下流での人権への影響を受けるライツホルダーが苦情を申し立てるメカニズムにアクセスできるようにする
以下に紹介するケーススタディが示すように、これらの実践は、さまざまなセクター、国の状況、ビジネスモデルにおいて採用され、さまざまな人権への影響に対処するよう設計されている。