日本:政府によるブースター接種計画が進む中、一部企業が従業員に圧力をかける「ワクチン・ハラスメント」に弁護士が警鐘
['Vaccine harassment' poses challenges for workplace booster push]2022年1月11日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター ]
日本でのワクチン接種プログラムの開始は遅かったが、昨年夏の初めから職場や大規模なセンターでの接種を通じてペースが上がり、政府は12月初旬にブースター接種を開始した。
しかし、従業員の健康に対する責任感や、取引先がワクチン接種者としか取引したがらないなどの理由から「ワクチン・ハラスメント」にならないよう、企業は慎重にアドバイスする必要があると、職場でのハラスメントに詳しい柳田忍弁護士は指摘する。
「圧力で(接種を)促したり、不正確な情報に基づいて説得したりした場合は、ハラスメントとみなされる可能性がある」と話す。
日本の企業は、従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づけていない。義務とした場合、昨年6月に大企業を対象に施行された、職場でのハラスメントを防止するための法律に違反する可能性がある。同法は中小企業には今年4月から適用される。
しかし、一部の企業はそれにもかかわらず、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるように従業員に道徳的圧力をかけている。
東京の会社で勤める女性は、社長から職場でウイルスが蔓延するのを防ぐためにワクチン接種を受けるよう呼びかけるメールを受け取ったという。
「社内の誰かが感染すれば、余計な仕事が増えて赤字になる。この会社でワクチン接種を受けない正当な医療上の理由がある人はいない」とメールには書かれていた。
女性はメールを受け取る前からワクチン接種を決めていた[...]。しかし、それでも違和感を覚えたのは、そのメールが全社員に送られたものなのか、それともまだワクチン接種を受けていない人だけに送られたものなのかが分からなかったからだ。
この女性の家族は、「(ワクチン接種の)圧力を感じて、会社に行くのが辛いと言っていた」と話している。
柳田弁護士は、このメッセージは不利益な扱いを受ける可能性を示唆しているため、この女性のケースはおそらくハラスメントに該当すると指摘する。
また、「ワクチン拒否を会社の損害を気にしない人の身勝手な行為とレッテル貼りするのも問題だ」とし、「ワクチン接種を受けるよう同調圧力をかけることになる」と指摘した。
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昨年は、ワクチン接種をめぐって法務省の人権相談窓口にサポートや助言を求める人が相次いだ。同省の担当者によると、相談事例の中には、「ワクチン接種を受けないと転勤になる」と言われたというものや、明らかにワクチン接種を強要する企業があったという。
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日本弁護士連合会が昨年5月と10月に合わせて4日間、相談窓口を設けたところ、ワクチン接種に関する相談が約300件寄せられた。
同会の人権擁護委員会委員長の川上詩朗弁護士は「ワクチン未接種の労働者を解雇するなど、深刻な労働問題が起きている」と指摘する。
川上弁護士によると、企業側も「取引先から従業員のワクチン接種状況の開示を求められたらどう対応すればいいか」「求職者に面接でワクチン接種状況を聞くのは差別にあたるか」といったアドバイスを求めるなど、厳しい状況に置かれているという。