東南アジア:水資源管理の国際機関「メコン河委員会」、鉱山開発が原因と疑われるメコン河とコック川の深刻なヒ素汚染を発表
[Laos, Thailand, Myanmar Faces Arsenic Contamination in Mekong River] 2025年7月8日
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
2025年7月8日、メコン河流域4カ国が加盟する水資源管理の国際機関「メコン河委員会(MRC)」は、ラオス・ミャンマー・タイの国境をまたぐメコン河およびその支流コック川の一部区間で、国際的な安全基準を上回るヒ素汚染が確認されたと発表した。
MRCによると、[...] ミャンマー・ラオス・タイの三国国境地域に設定された5つの調査地点のうち、4地点で水1リットルあたり0.025ミリグラムのヒ素が検出された。これは世界保健機関(WHO)が定める飲料水中の安全基準(0.01ミリグラム/リットル)の2.5倍にあたる。
調査地点は、上流から下流にかけて、次の5地点で実施された。
- ミャンマーとラオスの上流国境付近(C1)
- 両国国境にある「ゴールデン・トライアングル」南側の地域(C2)
- タイ北部チェンセーンとラオスの国境付近(C3)
- ソップコック近郊のタイ・ラオス国境(C4)
- タイのチェンコーン郡とラオスのフアイサーイ郡の中間地点(C5)
このうち、C2〜C5の4地点で基準を超えるヒ素が確認され、最上流のC1地点では基準内に収まっていたことから、C1からC5の間のいずれかに汚染源があると考えられている。
タイの公害管理局も2025年5月に同様の調査結果を公表しており、同じ区間で0.025ミリグラム/リットルのヒ素を検出していた。タイ当局によれば、この汚染は、ミャンマーの少数民族武装組織「ワ州連合軍(UWSA)」が実効支配する地域で行われているレアアース(希土類)採掘に起因する可能性が高いという。採掘で発生した有害物質が支流のコック川に流れ込み、メコン河に到達しているとみられる。
コック川は、タイ北部のチェンマイ県およびチェンライ県内の複数の郡を流れており、近年は上流での鉱山開発を背景に、深刻な環境問題がたびたび報告されている。
MRCは今回のヒ素汚染について、「3カ国にまたがる中程度に深刻な越境環境問題」であると警告。汚染が国境を越えて広がっていることから、流域国間の協力体制を一層強化する必要があると強調した。
また、ラオスとミャンマーの国境付近という上流域でヒ素が検出されていることから、汚染源が流域全体に深刻な影響を及ぼしている可能性も指摘された。MRCは現在、関係各国の政府機関と連携し、共同監視体制とデータ共有の強化に取り組んでいる。
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