飲食チェーン店「ステーキのくいしんぼ」の店長だった男性（当時２４歳）が自殺したのはパワーハラスメントと長時間労働が原因として、男性の両親が経営会社や当時の上司に約７３００万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は４日、両親の主張をほぼ認め、約５８００万円の支払いを命じた。山田明裁判長は賠償額算定に際し「男性にほかに自殺の原因となる事情はなかった」と、男性側の過失による減額を認めなかった。

　この会社は「サン・チャレンジ」（東京都渋谷区、上田英貴社長）。都内などで約３０のステーキ店のほか「おにぎりのさんかく山」「グリム原宿店」などの飲食店を経営する。原告側の弁護士によると、自殺を巡る訴訟で本人の過失を認めない判断は異例という。

　判決によると、男性は２００７年に採用。０８年２月ごろから東京・渋谷にある系列２店で勤務し、その後店長になったが、１０年１１月に自殺した。判決は、男性は渋谷の２店舗での勤務時、１日当たりの勤務時間が１２時間半を超え、休日も「ほとんどなかった」とした。

　さらに、複数店を統括する上司から恒常的に「使えない」などの暴言や、しゃもじなどで殴られる暴行を受けたと指摘。これらにより強い心理的負荷がかかったとして自殺との因果関係を認め「業績向上を目指すあまり、適切な労務管理ができる体制を何らとっていなかった」などと会社の責任を認定した。

　社長についても「長時間労働を簡単に認識できたのに、何ら有効な対策を取らなかった」、上司についても「許される行為ではない」と賠償責任を認めた。

（原文より引用）