人権擁護者とビジネス:権利を守り、公正な経済を実現するために 概要 (2015〜2024年)

Photo by Emily Arasim via WECAN

Indigenous Peoples Rights International (IPRI)
この10年、多くの人権擁護者(HRDs)が、企業による人権や環境への侵害を告発し、説明責任と権利を尊重する企業行動を求めることで、企業行動の改善と人権侵害の抑止に取り組んできました。たとえば、自らの土地を搾取的な鉱業開発から守ろうとする先住民族、森林伐採による環境破壊を報道するジャーナリスト、縫製産業で労働環境の改善を求める労働者など、さまざまな立場の人権擁護者が、権利が尊重され、人と自然がともに健やかに暮し、公正な経済が育まれていく―そんな公平で持続可能な社会、そしてすべての人にとって豊かな社会の実現を目指し、最前線で活動しています。こうした人権擁護者の権利を尊重することは、企業の責務であると同時に、企業や投資家が人権リスクを回避し、長期的な持続可能性を確保するためにも不可欠です。しかし、こうした重要な活動にもかかわらず、人権擁護者は深刻なリスクにさらされ続けています。ビジネスと人権リソースセンターの調査によると、2015年1月から2024年12月までの10年間に、企業活動に起因する人権リスクや被害に対して声を上げた人々に対する攻撃が、世界147か国で6,400件以上記録されました。これは、過去10年で平均して1日に約2件の攻撃が発生していた計算になります。攻撃には、殺害、司法ハラスメント、身体的暴力、脅迫、逮捕などが含まれます。2024年だけでも660件の攻撃が確認されており、身体的・精神的・経済的被害をもたらしただけでなく、地域社会の安定や市民の自由を脅かす結果となっています。
主な調査結果
- 2015年から2024年までの10年間に記録された人権擁護者への攻撃は6,400件以上にのぼり、世界中のあらゆる地域、ほぼすべての産業セクターで発生しています。
- 攻撃の約4分の3は、気候変動、土地、環境問題に取り組む人権擁護者を標的としたものでした。
- 攻撃の21%は、世界人口のわずか6%にすぎない先住民族に対するものでした。
- 人権擁護者への攻撃件数がもっとも多かったのは、鉱業、農業関連ビジネス(アグリビジネス)、そして化石燃料関連の産業でした。
- 企業活動による人権侵害に声を上げた人権擁護者にとって、ラテンアメリカ・カリブ地域およびアジア・太平洋地域は、引き続き特にリスクの高い地域です。全体の約4分の3にあたる攻撃が、この2つの地域に集中しています。