ジンバブエ:中国が採掘し、欧米企業が使用しているジンバブエのリチウムは行き場を失った家族や汚染された河川を残し、 「コンプライアンスの盲点 」であると報じられる
[Lithium Dreams, Colonial Realities: How Zimbabwe’s Mineral Wealth Is Being Hijacked in Plain Sight] 2025年5月10日
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
トラックが到着したとき、ビキタの村では何十もの家族が眠っていた。夜の闇に紛れて、外資系採掘会社の調査員が地元の役人を伴って現れ、並べ立てられた赤い旗は後に境界線となった。数日のうちに、何世代にもわたって農業を営んできた村人たちの畑はリチウム採掘区域に指定されたのである。環境影響評価を見た者はおらず、補償を受けた者もいなかった。世界はリチウムを必要としている。リチウムは再生エネルギー、電気自動車、蓄電技術の要となるからだ。しかし、イースタン・ヘラルド紙が今回の調査で明らかにしたように、その移行に伴う人的・環境的コストは、沈黙のうちに葬り去られようとしている。
イースタン・ヘラルド紙が入手した内部文書や裁判所提出書類によると、3,200ヘクタール以上の農村地帯が、公的な審査なしに再区分された。いくつかの地区では、行政命令によって、地方議会や土地所有者の同意なしに、オフショア法人を通じて運営する中国系企業への土地譲渡が認められた。ジンバブエ歳入庁から流出した監査資料によると、2022年第3四半期から2025年第1四半期にかけて、リチウム関連の収入11億ドル以上が国外に流出している。この資金は、香港やモーリシャスといった税制優遇のある国・地域を経由しており、鉱業会社は納税負担を最小限に抑えていた。
[...] 流出した雇用記録によると、中国資本のリチウム鉱区における技術職のうち、ジンバブエ国民の割合はわずか13.7%である。国内で地質学者を養成しているにもかかわらず、ジンバブエは中国から技術者や労働者を輸入しており、しかもそれは多くの場合、包括的なビザ免除のもとで行われている。中国が資源を採掘する一方で、欧米企業はそこから利益を得ている。テスラ、BYD、フォルクスワーゲンは、ジンバブエで採掘され、中国で加工されたリチウムを使用している。しかし現在、欧米企業はこの原材料の原産地を監査していない。EUの「重要原材料法」は、域外での精製についてはトレーサビリティ(追跡可能性)を義務づけていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ジンバブエを 「コンプライアンスの盲点 」と位置付けている。