パキスタン:アリ・エンタープライジズ社の工場火災から10年、縫製工場の安全対策が「衝撃的」に欠如していることが調査で判明
[ Report: A decade after deadly Ali Enterprises fire, Pakistan’s garment workers report shocking lack of fire exits ] 2022年7月1日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
クリーンクローゼスキャンペーン(CCC)とカーディフ大学社会経済研究所(WISERD)が実施した最新の調査により、労働者保護のために法的拘束力のある国際的な安全協定の拡大が緊急課題であることが明らかになった。
パキスタンで250人以上の縫製労働者が死亡した大惨事、アリ・エンタープライジズ火災から2022年で10年となるが、衣料品・繊維産業に従事する労働者の権利は未だほとんど改善されていない。雇用主や国際的なブランドに対して、基本的な安全プロトコルや手順の実施に関する責任を問う安全協定はまだ設けられておらず、労働者をめぐる状況は大火災が発生した時とほぼ同じである。この事実は、過去18カ月間にパキスタンの縫製工場で死亡や負傷を引き起こした10件以上の事件を記録したインシデントトラッカーによって集められたデータからも証明された。[...]
労働者を保護するにはどのような改革が必要かを理解するために、CCCは約600人の労働者を対象に調査を実施した。調査項目は、職場でのハラスメント、職場における労働者の安全と健康、労働者の福利厚生をといった多岐にわたる課題が網羅されている。
報告書で取り上げられた問題の中で最も緊急性が高いのは、パキスタンの衣料品製造現場における工場の安全性に関して、法律で義務付けられている規定を含む最も基本的な規定のいくつかに不備が見つかった点である。調査結果によると、85%の労働者が、火災の際に適切な非常階段の利用が不可能であると報告した。また、5人に1人の労働者が、職場では火災訓練が実施されておらず、緊急時の避難経路や出口を把握していないと回答した。さらに、パキスタンでは自主的な工場点検が行われていないため、労働者からは火災報知器やいくつかの安全装置の存在は報告されているものの、システムや装置が安全に作動しているかどうかを確認するための定期点検が実施されていないことが判明した。
また、懸念すべき点として、女性が労働者の大半を占める工場では、障害物のない避難経路にアクセス可能であると回答した労働者は、わずか4分の3であったことが挙げられる。
この調査結果により、「繊維・衣服産業における健康と安全のための国際協定」のパキスタンでの拡大が急務であることが浮き彫りになった。このような協定は、資格のあるエンジニアによる定期的で自主的な工場点検を保証し、点検によって指摘された安全上の危険を修正するための期限付きの改善計画の遵守を求め、労働者が報復を恐れることなく安全手順の実施について工場経営者に責任を負わせることが可能な苦情処理メカニズムを提供するものとなる。パキスタンでの協定の拡大に向けた計画、運営、実施を実現するためには、現地の組合や労働者の権利団体の関与が極めて重要である。
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