日本:ヒューマンライツ・ナウ報告書 総合商社の取引上の人権問題への対応は国際水準から大きく立ち遅れている
「総合商社7社の人権に関する方針と実施状況についてのアンケート調査結果および報告書の公表」2月13日2020年
...東京を本拠とする国際人権団体ヒューマンライツ・ナウは、2019年夏、日本の総合商社7社(三菱商事株式会社、三井物産株式会社、伊藤忠商事株式会社、住友商事株式会社、丸紅株式会社、双日株式会社、豊田通商株式会社)に対して、人権方針の策定と取組み状況を確認するためのアンケートを実施し、上記全ての商社からの回答を得た。
...今回のアンケートの回答を通して、各商社が人権課題に取り組む必要性を認識していることは窺えたものの、指導原則が求める企業の負う人権尊重責任を実現するための具体的な制度や取組みは、一定の発展が見られたものの未だ不十分なものが極めて多く、改善の必要性が非常に高いことが判明した。
...住友商事以外の6社が人権方針を定めていると回答した。
...豊田通商以外が国際人権基準の遵守を明記しているが、国際人権基準と国の基準が矛盾した場合の対応について明記しているのは、双日、丸紅、伊藤忠のみであった。
...7社全てが、サプライヤーに対しても行動指針(コード・オブ・コンダクト)などを通して人権を尊重するよう求めている点は評価できる。...しかし、行動指針等の共有だけでは実際に人権リスクを予防・軽減するために十分とは言えない。
…サプライヤーに対する監査を定期的に実施しているのは三井物産、三菱商事、伊藤忠のみであった。...しかしながら、上記3社が取り扱う商材全てについて定期的な監査を実施しているのか、原産国の末端までさかのぼって監査が実施されているのかは回答からは明らかにされていない。
…双日は木材については三次以降のサプライヤーまで、住友商事は三次サプライヤーまで、伊藤忠は一部の二次サプライヤーまで把握しているとする。双日のその他の商材及び三井物産と三菱商事は一次サプライヤーまで、丸紅は体制構築中、豊田通商は無回答であった。
…サプライヤーを含むビジネスパートナーに技能実習生の雇用の有無について、あると回答したのは三井物産と住友商事であり、残りは回答時点では把握していないとの回答であった。
…各社ともダイバーシティを掲げるものの、役員管理職への女性比率が極めて低い。
…児童労働、強制労働、人身取引に関しても、各社回答内容にばらつきがあるものの、全サプライチェーンを対象に、どこまで実効性ある施策を実施しているかは把握できなかった。
…救済システムを現在構築中であると回答した丸紅を除き、残りは救済システムを設置していた。
...各社ともに、NGO(豊田通商を除く)や地域住民(双日を除く)らとのダイアログを実施していることは評価できる。実施した事実のみならず、ダイアログで提起された人権リスクに対する対応を含めて公開することが望ましい。...