2024年4月、国際労働機関（ILO）は、気候変動が世界の労働者に与える影響を探る報告書を発表した。この報告書によると、多くの場合、労働者は気候危機の影響に対して最も脆弱である。また、労働安全衛生の保護措置が「進化するリスクに追いついていない」状況で、労働者の死亡率や罹患率が増加している。

報告書では、特に脆弱な労働者として、移住労働者やインフォーマル経済の労働者を挙げている。また、特に以下のような気候の変化が労働安全衛生に影響を及ぼしていると指摘している。

• 酷暑：特に農業、自然資源管理、建設、ごみ収集、緊急修理作業、運輸、観光、スポーツ関連の労働者が影響を受ける
• 太陽紫外線（UV）：特に農業、建設、ライフガード、電力事業、園芸、郵便労働者、港湾労働者などの屋外労働者が影響を受ける
• 異常気象：特に医療関係者や消防士を含む緊急事態に従事する労働者、清掃に携わる建設労働者、農業や漁業に従事する労働者が影響を受ける
• 職場の大気汚染：特に屋外労働者、運輸労働者、消防士が影響を受ける
• 伝染病：特に農業労働者、林業者、造園業者、グラウンドキーパー、庭師、塗装工、建設労働者、消防士などが影響を受ける
• 化学農薬、特に農業労働者、農園労働者、化学工業、林業、農薬販売、緑地、媒介生物制御に関連する労働者が影響を受ける

主な調査結果は以下の通りである：

• 何十億人もの労働者が気候危機によって悪化する災害に脆弱であり、特に農業を始めとするいくつかの産業で働く労働者が危険にさらされている。
• 気候変動は労働者の健康に大きな影響を与えており、このことは確固たる証拠に裏付けられている。年間18,970人が酷暑にさらされたことで死亡に至り、何千人もの労働者が農薬中毒、職場の大気汚染、紫外線、寄生虫や媒介生物による感染症で命を落としている。
• 各国は、酷暑に対処するための新しい法律を導入している。その他の気候変動の影響については、概ね既存の労働安全衛生や環境規制の中に保護措置が組み込まれているが、法律は国によって大きく異なる。災害リスクが変化し高まるにつれて、法律も適応しなければならず、特に脆弱な労働者には特別な保護が必要となる。
• 政策の実効性を確保するためには、政府と社会的パートナー間の社会対話が必要である。政策は異なる省庁間で調整されるべきである。
• 職場は気候緩和戦略にも貢献できる。
• 気候変動と労働安全衛生の関連性を示すエビデンスは「重要な分野では限られている」ため、さらなる研究が必要である。
• グリーンで持続可能な技術へのシフトは、太陽光パネルに含まれる有毒化学物質が労働者の健康に与える影響など、新たな安全衛生の課題を生み出す可能性がある。