ILO、ギグワークに関する国際基準の策定で合意;人権団体は前向きな進展と評価
[ILO Commits to International Standards on Gig Work] 2025年6月13日
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
国際労働機関(ILO)は、[...] 「プラットフォーム経済」(いわゆるギグワーク)における「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」に関する拘束力のある国際基準を策定することで合意した。国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは、これを画期的な前進であると歓迎している。この決定は、国際労働基準やILOの方針を定める年次総会「国際労働会議」において、ILO加盟国の多数と労働者代表の支持を得て採択された。一方で、使用者(経営者)代表団と、スイス、インド、米国を含む一部の政府代表はこれに反対した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのシニアエコノミックジャスティス研究員であるレナ・シメット氏は、次のように述べている。「ILOがプラットフォーム労働に関する拘束力のある基準策定を進めることは、大きな勝利である。ギグワーカーは長年、その権利を否定されてきた。世界共通の最低基準は状況を根本から変える力を持つが、そのためには、全ての労働者を対象としなければならず、低く不安定な報酬、広範囲にわたる誤分類、そして責任の所在が不明確なアルゴリズム管理(AIなどによる自動的な労務管理)と言った重要課題に十分に対処することが不可欠である。」
多くの国では、国内法の不備によって、プラットフォーム企業による労働者の「誤分類」されている。労働の実態や企業からの管理の度合いは「従業員」の基準を満たすにもかかわらず、企業は労働者を「自営業者」や「独立請負人」として分類している。こうした誤分類により、ギグワーカーは最低賃金、労災補償、社会保険といった基本的な労働保護を受けられないことが多く、また権利救済の手段も限られている。
今回の交渉は、[...] 基準の種類や範囲、そして対象となる労働者と企業の定義に焦点を当てたILOの報告書に基づいて行われた。基準は、将来的には拘束力のある条約とそれに付随するガイダンス(指針)の形をとる見込みだが、その実効性を左右する重要ないくつかの要素について、加盟国間での深刻な意見の対立が交渉過程で明らかになった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ、プライバシー・インターナショナル、国際労働組合総連合(ITUC)、グローバル・ソーシャル・ジャスティスを含む33の団体は、基準に含めるべき重要分野についての共同声明を発表した。
その中でも、どのような事業体を「デジタル労働プラットフォーム」と定義するか、また、どのような人々を「プラットフォーム労働者」とみなすかという点は特に重要である。定義の範囲が狭ければ、数百万人に及ぶ労働者が保護の対象から漏れてしまう恐れがあるからだ。
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多くの国で、こうした労働者は社会保障制度からも除外されており、業務上の事故、病気、失業の際に何の保護も受けられない。
プラットフォーム企業は、仕事の割り当て、報酬の引き下げ、その他の懲戒処分、解雇といった労働条件に影響を与える決定を、アルゴリズムシステムを用いて行うことが多い。これらのシステムは不透明でエラーを起こしやすく、差別的であることも少なくないが、労働者がその自動化された決定に異議を唱える救済策はほとんどないのが実情である。
6月の会議では、一部の交渉担当者が「各国の法律および慣行に従って」という文言の使用を繰り返し提案した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、このような文言が最終文書に含まれれば、本来意図された保護が各国の国内法によって無力化されてしまう恐れがあると懸念を示している。
最終的な交渉は、2026年の国際労働会議で行われる。議題には、社会保障、労働安全衛生、暴力とハラスメント、報酬の詳細、アルゴリズム管理、データプライバシー、そして労働者の誤分類への対策などが含まれる予定である。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、新たな基準は、分類や雇用形態にかかわらず、すべてのプラットフォーム労働者に対して公正かつ有利な労働条件を保障するとともに、蔓延している労働者の誤分類の問題にも対処すべきであると主張する。
今後の交渉ではプラットフォーム労働者自身が重要な役割を果たすべきである。彼らはしばしば団結権や団体交渉権を否定されており、労働組合として承認されないことが多い。その結果、一部の労働者は今回の初期交渉プロセスからも排除されていた。
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