インド産業連盟、日本企業向けにインドのビジネスと人権の状況に関する新報告書を発行
[Business and Human Rights Landscape in India for Japanese Companies] 2022年6月6日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
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インドと日本は、各国独自の様々なイニシアチブ、政策、法的枠組み、規制を通じて人権尊重を支持している。両国とも国連人権理事会の理事国として、「ビジネスと人権」に関する国別行動計画(NAP)の策定にコミットしている。しかし、NAPの実施状況は異なり、日本は2020年にNAPを策定したが、インドのNAPはいまだ起草段階にある。
本報告書では、インド企業に加え、インドで事業を行う日本企業も対象とし、両国における「ビジネスと人権」を巡る状況を比較分析した。インドのNAPは起草段階にあるものの、「ビジネスと人権」に関する行動は、「National Guidelines on Responsible Business Conduct(責任あるビジネス行動に関する国家ガイドライン、NGRBC)」や「Business Responsibility Reporting Framework(ビジネス責任報告枠組み、BRSR)」など、同国ですでに普及している関連政策や情報開示の枠組みなどを通じて確認することができる。本報告書は、「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」の第二の柱(人権を尊重する企業の責任) に重点を置き、インドと日本両国のNAPを比較することを目的としている。また、インドで事業を行う企業が準拠、尊重、保護しなければならない人権に関するその他の政策文書や枠組みについても検討する。
部門別の視点として、本報告書では、インド国内で事業を行う日本企業が多く、インドのGDPに大きく貢献している4つの主要部門(電子機器、自動車、ファーストリテイリング、金融・保険)について分析する。これらの部門の複雑かつ長いサプライチェーンには大勢のインフォーマル労働者が雇用されている。本報告書では、それに起因するサプライチェーンの脆弱性に伴う複雑性を明らかにしている。4つの部門に共通する潜在的な人権リスクとして、差別、劣悪な労働条件、強制労働・児童労働などが特定された。
さらに報告書では、インドの「ビジネスと人権」を巡る状況のみならず、同国のNAPによる要求事項に対する日本企業の備えについても検討した。日本企業は策定済みの人権方針を通じて人権の保護に取り組んでいるが、自社およびサプライチェーンにおいて、「ビジネスと人権」への認識を段階的にさらに高めていく余地はあるとみられる。企業には、従業員の福利を向上させるための優れた制度が整えられており、その中には対象を契約労働者にまで拡大しうるものもある。次なるステップとして、現地における潜在的な人権リスクに十分に備えるために人権デューディリジェンス(HRDD)を実施し、現地の政策枠組みにより近いうちに設定される要求事項にも準拠することが期待される。
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