パレスチナ被占領地(OPT)/イスラエル:イスラエル国防軍向け衣料・アクセサリー供給メーカーの実態調査—繊維産業の軍事関与は「氷山の一角」
[New Report Sheds Light on Global Involvement in Outfitting Israel’s Military] 2025年2月18日
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
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アパレル生産労働者の擁護団体クリーン ・クローズ・キャンペーン(CCC)の委託を受けた最新の報告書は、インド、ベトナム、トルコの軍用衣料品・アクセサリー製造業者が、イスラエル国防軍(IDF)に物資を供給している疑惑のあるイスラエル企業とどのように関係しているかを概説している。
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この調査は、オランダの非営利団体「多国籍企業研究センター(SOMO)」に属する The Counter によって実施されたもので、これまで不透明であった軍事装備(タクティカルベストやヘルメットなど)の国境を越えた供給経路を明らかにしようとしている。
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The Counter使用した税関データでは2023年10月から2024年5月のデータしか調査ができなかったが、米国の複数の州から計44件の軍事関連物資の出荷が確認された。[...] しかし、サプライヤーや購入者の情報は不明であり、グローバルサプライチェーンの不透明性と、軍需品の流通経路を追跡する難しさが浮き彫りになった。
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この最初の調査で、IDFのサプライヤーの可能性がある15社(CCCが14社、The Counterが1社を特定)が特定され、2024年6月までの12か月間に、この15社とインド・ベトナム・トルコのサプライヤー9社とイスラエル企業7社のつながりが確認された。
特定されたサプライヤー9社
インド:Akiro Protech、Viraj Syntex、Star Aerospace、Sundaram Industries、Kwik Patch
ベトナム:MK Vina、Light to Summit Vina、Outdoorpark Vina
トルコ:Garanti Kompozit
調査の対象は、買い手と直接関係のあるサプライヤー企業に限定された。そのため、原材料の繊維の栽培や抽出、生地の加工や生産、ボタンやファスナーといった部品の製造に関わる企業は対象外となっており、言い換えると、これは氷山の一角に過ぎない。
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報告書によると、イスラエルの企業 Polaris Solutions、Masada Armour、Hagor、Marom Dolphin、Agilite、Source Tactical Gearなどが、軍事装備(バックパック、ヘルメット、ヘルメット用カバーパッド、防弾ベストに使用されるセラミックプレート、タクティカルベスト、ベルト、織布およびコーティング生地など)の出荷品を受け取ったとされる。また、イスラエル軍のオンラインショップKasdaでは、前述のサプライヤーから仕入れた製品が販売されていることが確認されている。
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Masada Armourを除き、報告書に掲載された企業はコメント要請に応じなかった。[...] なお、The Counterは、報告書に記載された製品がIDFに到達する前に別の企業を経由した可能性があることを認めており、「理論的には、大手企業が製品を再輸出する可能性もある」と指摘している。
Masada Armourの代表者は、[...]「当社は、IDFやイスラエルの防衛機関向けに製品を製造するイスラエル企業であり、世界中の顧客にも供給している。我々はイスラエル国防軍やイスラエルおよび世界中の防衛機関の主要サプライヤーであることを誇りに思っている」と述べた。また、報告書で指摘されたMasada Armourの出荷品(ヘルメットとセラミックプレート)について、「研究開発目的のサンプルであり、販売用ではない」と説明した。[...]
CCCは、繊維業界がイスラエルによる軍事行動をどのように支えているかを明らかにしたいと考えている。
労働者権利団体「レイバー・ビハインド・ザ・レーベル(Labour Behind the Label)」のキャンペーン責任者アレナ・イワノヴァ氏は「この恐ろしい暴力行為に、複数の産業が加担し、利益を得ている」と指摘し、[...]「私たちは、繊維業界全体がパレスチナ人に課せられている占領と暴力にどのように関与しているのかを知りたかった」と述べた。
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[武器の影響と比べて]報告書で取り上げられた軍事用衣類やアクセサリーの戦略的重要性を過小評価すべきではない。報告書では、「オペレーション・イスラエル」 と呼ばれる活動にも言及している。[...]この活動は、IDFに軍事装備や医療用品を提供するための資金集めに取り組んでおり、手袋、帽子、ジャケット、防弾ベスト、ブーツ、ヘルメット、Hagorブランドのドローン用バックパック などをイスラエル軍に届けている。特に、IDFが装備不足に陥っているという報道が出されてからは、他にもこうした支援活動が活発化している。
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ロサンゼルスのガーメント・ワーカー・センターから英国のレイバー・ビハインド・ザ・レーベルまで、世界中の衣料品労働者の権利擁護団体や労働組合は、パレスチナへの連帯を表明している。サプライチェーンのつながりがより具体的に明らかになった今、声明を出すだけでなく集団的な対応を実現できるかもしれない。
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低賃金で働く労働者の中にはパレスチナ占領に反対の声を上げる者も多いが、彼らは知らぬ間に、あるいは不本意ながら、パレスチナ人への暴力に使われる製品を生産している可能性がある。こうした状況は、権力構造が包括的かつ複雑に絡み合っていることを示しており、さらなる調査が必要であることを浮き彫りにしている。イワノヴァ氏は「不正義は現在の経済システムの中で増幅し、常態化している」と指摘する。[...] 軍事装備が国境を超えてイスラエルに持ち込むことを許すのも、不法占領地で作られた製品の国際市場への流入を許すのも、企業が他国の労働力を低賃金で搾取し利益を得ることを許すのも、すべて権力者の意志によるものだ。
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