ロシア:欧米の銀行が2023年にロシアに支払った税金は8億ユーロで、ロシアでの事業縮小の約束にもかかわらず、ウクライナ侵攻前の水準を上回る
[Western banks in Russia paid €800mn in taxes to Kremlin last year] 2024年4月29日
[英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
ロシアのウクライナへの本格侵攻後、ロシアに残っている欧米の大手銀行各社はロシアでの事業を最小限に抑えるという約束をしたが、2023年に侵攻前の4倍となる8億ユーロ(約1330億円)以上の税金を支払っていたことが分かった。
ロシアにおける資産規模上位の欧州7行(ライファイゼン・バンク・インターナショナル、ウニクレディト、ING、コメルツバンク、ドイツ銀行、インテーザ・サンパオロ、OPT)が2023年にロシアで計上した利益は、あわせて30億ユーロ(約5000億円)を超えていた。
この利益は2021年の3倍で、その一部は銀行がロシアから国外に引き出すことができない資金から生み出されたものだった。
フィナンシャル・タイムズ紙の分析によると、収益の急増により、欧州の銀行がロシアに支払った税金は、2021年の2億ユーロから約8億ユーロに増加。欧州の銀行だけでなく、シティグループやJPモルガンといった米国の金融機関も増益となった。
欧州の銀行の納税額は、2024年のロシアの歳入予想額の約0.4%に相当し、西側の制裁にもかかわらず、ロシアに残っている外資系企業が同国の財政安定の維持に役立っていることを示す一例となっている。
外資系金融機関の増益の理由は、金利の上昇だけではない。ロシアの銀行に対する国際的な制裁措置により競合他行が国際的な決済システムから切り離されたことで、ロシアで営業を続ける銀行がロシア国内の顧客へのアピールを強める結果となったことも原因のひとつである。
欧州銀の納税額8億ユーロの半分以上は、外資系金融機関の中でロシアでの事業規模が最大のオーストリアのライファイゼン・バンク・インターナショナルによるものであった。
ライファイゼンのロシアでの利益は、2021年から2023年の間に3倍以上となる18億ユーロに増加し、これはオーストリアのグループ全体の利益の半分を占めている(侵攻前は約3分の1)。
同行は、2023年の通常の税負担に加え、ロシア政府が一部の企業に課した課徴金として4,700万ユーロも支払っている。
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ライファイゼンはロシア国内の求人において「既存顧客基盤を多角的に拡大していく」という野心的な計画を示した、とファイナンシャルタイムズ紙が報じた。
同紙に対し、ドイツ銀行、ハンガリーのOTP、コメルツ銀行の代表者らは、もともと各行のロシア事業はライファイゼンと比べる規模が小さいが、さらにそれを大幅に縮小したと語った。イタリアのインテーサはロシア事業の売却こそまだであるが、撤退間近だとしている。ウニクレディトはコメントを控えた。
キエフ経済大学がロシア中央銀行のデータに基づき算出したところによると、米国第4位の金融機関であるシティグループは、ロシアで法人・個人部門を閉鎖したにもかかわらず、2023年に1億4900万ドルの利益をあげ、ロシアにおける納税額は欧米の銀行で4番目に多額となる5300万ドルを納税した。
米国大手銀行JPモルガンも3500万ドルの利益を上げ、680万ドルを納税した。
JPモルガンは、かつてロシアの銀行が米ドルのコルレス口座を開設する際の主契約者であったが、2022年以来、撤退に向けて動いている。同行は現在、ロシアの元パートナーであるロシア国営銀行VTBから数百万ドルの訴訟を起こされ、身動きが取れない状態である。
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2022年にロシア子会社から 「非友好的」な西側諸国の企業への配当支払いを禁止する規制が課されたため、各行はロシアで稼いだ現金にアクセスできない。
「ロシアの預金は中央銀行に預けておく以外、何もできない。だから金利が上がれば利益も上がる」と、ロシアに子会社を持つ欧州の銀行幹部は語った。
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