イスラエルのデジタル・インテリジェンス企業であるCellebrite社は、2021年春に株式公開の意向を表明した後、同社の製品が人権侵害に使用され、これにより評判が低下する可能性があるという「重要なリスク」を認め、その解決を図った。その数ヶ月後、手続きが完了しつつある中で、これらの重大な懸念に関する同社のその後の声明は、言葉よりも行動を求める市民社会組織の懸念を和らげるには至らず、同社の技術がジャーナリストに対して使用されていることや、Cellebrite社が中国から撤退したと発表した後も中国の警察に販売され続けていることがさらに報じられている。

ところで、2021年7月にビジネスと人権リソースセンターは、抑圧的な政権に製品を販売することで人権侵害を助長しているとの非難に対し、Cellebrite社に回答を求め、8月にはナスダック、米国証券取引委員会（SEC）、その他の関係者に、Cellebrite社の人権遵守が証明されるまで株式公開を停止するよう求める市民社会の声に応えるよう求めた。

8月、Cellebrite社は、米国証券取引委員会がForm F-4登録書を承認したことを発表し、ナスダックへの上場が可能となった。NGOのアクセス・ナウは、Cellebrite社の人権に関する記録について未解決の懸念を示し、バーレーン、ベトナム、ボツワナなどの政府との間で報告された人権リスクのある取引に対処していないと主張した。また、アクセス・ナウは、Cellebrite社が、有意義な人権方針を開示していないこと、人権リスクを軽減する取引先へのデュー・デリジェンスのための十分に設計された方針と手続きを示していないこと、Cellebrite社の技術によって被害を受ける可能性のある個人に救済措置を提供していないことなどを指摘し、Cellebrite社の「Ethics & Integrity」声明は誤解を招くものであると報じている。一方、The Interceptは、Cellebrite社が中国から撤退したと発表した後も、中国の警察がCellebrite社の製品を購入し続けていると報じている。それにもかかわらず、同社は8月31日にナスダックで取引を開始した。

9月初旬、リソースセンターはCellebrite社に上記の懸念事項に対する回答を求めた。同社は下記リンクの回答を提供し、「取締役会の諮問機関として機能する倫理・道徳委員会（Ethics and Integrity Committee）」の設立を発表した。「この委員会の役割は、発展する国際法、責任あるビジネス・プラクティスに関連する倫理的配慮、およびCellebrite社のテクノロジーの販売と使用に適用される法律と規制の下での要件に関連する事項について、取締役会に助言することである」。回答書には、「Cellebrite社は通常、合法的に行動する法執行機関を支持するという当社の使命に反する立場や行動をとる顧客とは取引を行わない」と記載されていた。また、「Cellebrite社が中国から撤退した後、Beijing Information Security Technology社はCellebrite社との契約の終了を確認し、同社が所有するすべてのCellebrite機器が破棄されたことを証明した」一方で、Cellebrite社の機器を再販していたとされる別会社のSmile社は「Cellebrite社製品の公認再販業者ではない」と記載されていた。回答の全文を以下のリンクから。