日本:移住連&技能実習生権利ネットワーク、技能実習制度における「奴隷労働構造」の根絶を政府に要請
[技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議中間報告に対する声明 ー「廃止」をまやかしに終わらせるのではなく、奴隷労働構造の根絶をー] 2023年5月12日
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政府は、2022年11月22日、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」という)を設置し、今般、中間報告書(以下、「本報告書」という)が公表された。
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まず、本報告書は、新制度について、技能実習制度が「人材育成機能」を有していることを前提にしつつ、この人材育成機能を「新たな制度にも目的として位置づけることを検討すべきである」とする(第4、2、(1))。
そもそも、「人材育成機能」は技能実習制度固有のものではなく、「出稼ぎ労働」であれば自ずと備わるものであり、過去40年のニューカマー外国人労働者の活躍に実証されている。また、現行の技能実習制度においては、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の移転による国際協力を推進することを目的」(技能実習法1条)とされているが、これが検証されたこともなく、所謂「好事例」どころか「技術又は知識の移転」のフォローアップもされてきていない。形骸化した目的を掲げ続けることは不毛であり、このことを名目にして、「職場移動」の自由を妨げ、奴隷労働構造をつくり出してきたことを忘れてならない。
新制度における目的として人材確保を掲げつつ、「人材育成」をも掲げることは、「外国人労働者受入れ」の本音と建前の乖離をつくり出し、外国人技能実習制度の人権侵害、奴隷労働構造を存続させるに等しいものである。
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本報告書では、新制度において、「人材育成そのものを制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残しつつも、制度目的に人材確保を位置づけることから、労働者としての権利性をより高め、また、制度趣旨及び対象となる外国人の保護を図る観点から、従来よりも転籍制限を緩和する方向で検討すべき」(第4、3、(1))とする。
しかし、前述したように「人材育成」というまやかし、ごまかしに問題があるのであり、民主主義社会においての労働者の普遍的権利である転籍の自由を制限することに一片の合理性もないことは明白である。[...]
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本報告書では、「日本語能力やスキルレベルが未熟練の外国人材を海外から積極的かつ円滑に受け入れ、適切な人材育成等を行うためには、現行の技能実習制度において監理団体が担っている国際的なマッチング機能、受入れ企業等に対する適正な受入れの監理・支援の機能、外国人に対する職業生活から日常生活までの全般的な保護・支援等の機能や、現行の特定技能制度における登録支援機関が担っている外国人に対する支援の機能は重要」としている(第4、3、(2)、ア)。
そもそも、債務労働の元凶が、監理団体による送出し機関との「国際的なマッチング機能」にあることは明らかであり、前提に誤りがある。そのような前提から監理団体を存続させる必要は全くないのであって、不適切である。民間団体が送出しに関与することが、技能実習生が送出し時点において多額の借金を背負う原因となってきたことは、本報告書においても指摘されている(第4、3、(2)、ウ)。
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本報告書では、新制度から特定技能制度への移行が円滑に進むように制度設計をすることも検討されている(第4、2、(2))。
しかし、新制度は、短期ローテーション型の発想に基づくものであり、家族帯同を制限し、また、永住者への選択も奪うことになる。新制度により来日する労働者の定住が妨げられ、生活者としての権利保障は十分ではなく、結果、地域における人手不足解消にも資さないこととなりかねない。
今、求められているのは、地域産業の「担い手」、「後継者」であって、単なる「人材確保」だけではない。[...]
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